相続時精算課税とは?メリットとデメリットは?土地や株式に使える?
ここ数年「相続」というテーマに注目が集まっていますね。
雑誌や書籍でも相続をテーマにしたものをよくみかけますし、不動産や生命保険関連のセミナーなんかも多くあります。
これは平成27年1月1日から相続税の基礎控除の引き下げがあったことによって始まった現象だと思います。
もちろん平成27年1月からということはその前から相続というテーマはクローズアップされますから、平成25年ぐらいから現在までじわじわと注目度が上がっているとういことですね。
ちなみに相続税の基礎控除引き下げということは、言い方を変えると「相続税の増税」ですね。
昨今は法人税の減税、個人所得税や相続税などが増税になってきており、「法人は優遇、個人から税金を取る」みたいな感じがしますね。
さて、そんな相続の話題の中で、ちょいちょい話題になる「相続時精算課税制度」。
今回はこのテーマについてメリットとデメリットをまとめてみました!
なお税金や民法関係の話が関係してきますので、実際に手続きをするときには税理士・弁護士等の専門家に相談しましょうね。
相続時精算課税制度とは?
相続時精算課税制度とは、贈与の1つの方法のことを言います。
贈与とは、基本定義はまた国税庁HPでも確認いただきたいのですが、「ただで現金とかあげるよ」ということ。
そして贈与には贈与税がかかります(何か得をすると大体税金がかかるんですよね、この仕組みって結構すごいと思います)。
贈与税とは、現金等の価値があるものを他の人にあげたときにかかる税金のことを言います。
贈与税という税金を支払うのは現金等の価値をもらった人ですね。
なんでもかんでも税金がかかる訳ではありませんが、原則基礎控除110万を超える金額については税金がかかります。
そしてこの贈与税の税率が結構高いんですよね・・・
参考:国税庁HPより
上記の税率は贈与の1つの方法の「暦年贈与」の税率。
暦年なので「毎年」贈与する度に基礎控除110万を超える部分については上記の税率で税金がかかってきます。
いかがですか?
結構な金額ですよね?
ここで話を戻します。
贈与のもう1つの方法。
相続時精算課税です。
こちらはある一定の条件を満たすと「2,500万」まで税金がかからずに贈与することができます。
2,500万を超える部分については20%課税となります。
大きな金額を非課税にできて、そのあとも20%(暦年贈与なら400万以下にしないと20%にならない)なら得じゃないか!と思うかもしれませんが、そんな簡単な話ではありません。
相続時精算課税制度は、相続発生時にその財産を相続の対象として税金をかける対象としてしまうんです。ただし、すでに支払った贈与税は引かれます。
わかりにくいですね?
次に簡単なシミュレーションを見てみましょう。
相続時精算課税のシミュレーション
現金5,000万で考えてみようと思います。
Aさんが子供であるBさんにこの現金5,000万を10年以内に渡したいとしましょう。
この前提で2つの方法を比べてみます。
暦年課税の場合
税率20%までならかかっても大丈夫ってことで、10年間贈与をします。
5,000万÷10年=500万で、500万から基礎控除を引いた390万を10年間贈与をします。
そうするとBさんは贈与税の負担はありますが、10年で累計5,000万をもらうことができます。
かかった税金は「73万×10年=730万」ですね。
相続時精算課税の場合
2,500万までは非課税ですから、2,500万に対して20%の税金がかかります。
税金の額は、2,500万×20%だから500万となります。
早くに財産を移動できてき、税金が500万だから一見お得ですが、話はそんな簡単ではありません。
相続時精算課税制度は、「相続」の「時」に「精算」をする「課税制度」なんですよね?
だから相続発生時つまりAさんが亡くなった時に、相続財産に5,000万を加えて相続税を計算します。
その時の相続税がかかれば、先に支払った贈与税500万を差し引きできます。
相続税がかからなければ、税金の払戻しを受けるわけです。
結局どっちがいいの?
結局「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」では、単純にどちらが得かということはわかりません。
いくつかのパターンをシミュレーションしてみて決めていくことになります。
例えば「1年目から相続時精算課税を使うパターン」とか、「5年間暦年贈与をしてから相続時精算課税を使うパターン」とか。
すべてのシミュレーションを望む方がいますが、不可能です。
税理士先生とかコンサルの方に「全部のパターンを・・・」とかいうのは辞めましょう。ダメな人だと思われますよ。
相続と関係しているのでいつ死ぬかわかりません。
そうするとあなたが50歳で100歳には死ぬだろうと思ったら、51歳までのパターンと52歳までのパターンと・・・とまず50通りあります。
そして細かな金額設定や状況設定によって、ものすごい数のパターンになります。
あなたが譲れないポイント=こんなことだけは起こってほしくない!ということ軸に考えると良いでしょう。
相続時精算課税のメリット
相続時精算課税のメリットとは何でしょうか?
いくつかあると思いますが
・すぐに財産等を渡せる
・2,500万まで非課税
・2,500万超過分は大きな金額でも20%課税
・贈与する人ごとに設定ができる
などがあります。
ただ最大のメリットは、「相続発生時に持ち戻す価格が、贈与時の価格である」という点だと思います。
このメリットについてはまた後程。
相続時精算課税のデメリット
相続時精算課税のデメリットは
・暦年贈与が使えなくなる
・一度適用すると暦年贈与に戻せない
・小さな金額でも2,500万超は20%課税
などがあります。
暦年贈与という手段が使えなくなるのは結構大きいので、事前のシミュレーションが大事になりますね。
相続時精算課税制度の有効性が高まる状況
相続時精算課税制度は色々とシミュレーションをしてみないと得をするかわからない制度です。
相続税の節税という面だけ考えると結局相続時に財産を加えて計算するのであまり効果がありません。
しかし、メリットでもお伝えした「相続発生時に持ち戻す価格が、贈与時の価格である」という点を考慮をすると大きな効果がある可能性があります。
それは不動産や自社株式などの価格が上昇する可能性がある財産を相続時精算課税で贈与する場合です。
また10年という期間で見ていきましょう。
仮に1,000万の自社株式があるとします。
この1,000万を相続時精算課税制度を使って贈与をした場合の税金は、0円です。
2,500万円までは非課税となるから0円ですよね。
そこから10年後、この株式の評価が10億円になっていたとします。
そこでこの株をくれた人が死んでしまい相続がおこると、相続時精算課税制度を使って私た財産は相続時に財産に加えて精算するのですから、課税対象になりますね。
では、その時の金額は?
1億ではなく、1,000万円でいいんです。
これってかなり大きいですよね?
今回は相続税の計算の仕方などはお伝えしていませんが、自社株式が1億円で他の財産もあれば相続税はかかってくる可能性が大きいでしょう。
しかし、1,000万円なら基礎控除などの範囲内で相続税がかからない可能性があります。
このように将来価格が上昇する可能性がある資産を対象として相続時精算課税制度を利用すると効果的なことが多いです。
不動産も値上がりが期待できる資産ですので、自社株同様に有効性の高い資産といえるでしょう。
相続税は税法側、財産分割は民法側
上記までで相続時精算課税制度が使えそうな条件が少しお分かりいただけたかと思います。
適用条件などは調べてみてくださいね。
最後に1つ注意点があります。
相続時精算課税制度はあくまで相続税側つまり税法側の問題です。
しかし、相続の大本は民法。
相続税は民法の中の相続の1つにしかすぎません。
何がいいたいかと言うと、誰かが亡くなって相続財産を分ける時の値段は時価となるため、その時の価格になります。
時価は市場に出回っている価格、相続税を計算するための相続税評価額は税金を計算するための価格。
この2つは乖離することが多くあります。
先ほどの例でいけば、税金の計算上は株式の評価は1,000万で済みますが、家族で財産を分ける時には1億円相当の金額になる可能性があります。
また何かでこの違いを詳しく記事にできればと思いますが、注意が必要です。必ず専門家に相談をするようにしましょうね。